細胞膜の膜電位に対するセシウムイオンの影響 no.1

いくつかの資料を調べてみると、
「放射性セシウムイオンの生体の神経細胞への影響は白でもあり、黒でもある」とだけは言えるようです。
はっきりわかったわけではないのである。
つまり、ICRPの基準値以下であろうとなかろうと、低線量であろうとなかろうと、微量でも継続的に摂取されれば、生体に蓄積されることだけは分かっている。それが、生体の働きに影響がないと、完全に楽観視できない。
そんなもの気にしていられない、いや気になる、これは環境と立場で、
国民の生活とその気持ちは分断されている。大変な問題である。

ただ、しかし。ここでは、その解決法を提示するのではなく、
あくまで、セシウムイオンが、細胞の内外の出入り、細胞膜に滞留するときに、細胞間の電位(「膜電位」という)に
影響を与えるしくみだけは、理解しておきたい。

なぜなら、我われの、神経伝達は、すべて、細胞の内外を出入りするイオンの濃度差(濃度勾配)によって、
内外の電位が決まり、電流が発生し、隣の細胞に電流が伝わり、「神経が正常に伝達される」という仕組みであるからである。
楽観視できないのはなぜか? つまりその怖さは放射線を発する、ということだけでなく、外界から入ってくる異物イオンそのものとして、どういう働きをするか、
すべてが明らかになったわけではないからである。
セシウムの放射線以外の要素、金属イオンとして、神経系疾患への影響についてである。セシウムイオンは、カリウムイオンと同族元素であるので、
生体内でカリウムイオンと似た働きをすると予想されている。

ここで良く言われる、カリウムの摂取が、セシウムの除去に役立つという、武田先生をはじめとする多くの意見があるが、カリウムの体内摂取は腎臓でコントロールされており、余分にとったカリウムは対外排出されるだけで、それがセシウムをゼオライトのように吸着する働きがあるとは、私が調べた限り文献は見当たらない。
つまりカリウムを多く含む食品の摂取が、放射性セシウム(体内ではイオン)の対外除去には繋がらないということである。
・参考文献-人体内放射能の除去技術―挙動と除染のメカニズム (KS理工学専門書) 放射線医学総合研究所
・参考URL
仙台赤十字病院呼吸器科医師 東北大学臨床教授 岡山博氏のコラム
残念な話である。さらに、生体内の体液、血液に分布したセシウムイオンは、血液の寿命が120日であるから、その間、腸管循環も含め、体内を延々と循環すると考えられ、子供はとくに血管脳関門(blood-brain barrier, BBB)がまだ形成されていないので、こういった金属イオンは容易に頸動脈を通り、脳へ渡っていくと考えられる。

ではまず、その前に、細胞内外でのイオンの動きを確認したい。
これは、神経細胞から神経細胞に電流が伝えられるときの仕組みで、
膜電位、細胞膜を介した、細胞内外の電位差で、電流が発生・消滅を繰り返す、基本的な仕組みである。
セシウムイオンがカリウムイオンになりすまして、カリウムチャネルを通り、細胞内外のイオン濃度に悪さをしないのか? 細胞間の電流の流れ、神経伝達に悪影響はないのか? 
ここを想像しながら、基本的な流れを見てみたい。

<どのように神経が伝達されるか、細胞間に電流が流れるのか、根本的な生理現象①~⑤>

以下イオン呼称略

①外から神経が刺激を受けると、ナトリウムチャネルが開き、受動輸送(濃度勾配)で、、ナトリウムを細胞外から細胞内に取り込む
②この結果、膜電位は急にナトリウムイオン濃度の比で決定されるようになる。
細胞内が-50mVが+50mVになって、となりの細胞と電位差を生じて、電流を生じる(神経伝達)。
③ナトリウチャネルを閉じる(そうすると、細胞内にナトリウムが溜まってしまう)
④ここで今度は、細胞内部のナトリウム増えた分と同じく、カリウムチャネルを開き、受動輸送(濃度勾配)で、外にカリウムを出す(セシウムもだす?)ともとの細胞内が-50mVの電位差になるで、元のマイナス電位状態。
しかし、これはあくまで、マイナス電位状態なだけで、イオンバランスは崩れている。
現時点:細胞内のナトリウム濃度が、外より高く、細胞内のカリウム濃度が外より低い状態。
これは、細胞内外の通常のイオン濃度(内:カリウム濃度が外より高い、外:ナトリウム濃度が内より高い)ではない。
⑤そのため、最後に、カリウムを細胞内に呼び込み、すなわち*エネルギーを使って輸送する細胞膜にあるポンプ蛋白の働き(能動輸送=イオンポンプ)そして、ナトリウムを細胞内から外へ濃度勾配にさからう能動輸送=イオンポンプ)を生じて、完全にもとの細胞の状態に戻る。

<予想>
上記の繰り返しが、セシウムイオンが入ってきたことで、カリウムイオンのような働きをして、
即ち陽イオンとして電位に影響を及ぼさないだろうか?
ここがきちんと解明されているのなら、また本ページで報告したいと思います。
セシウムイオンが、細胞内外に排出されず滞留したときに、
電位に影響を与えないであろうか・・・。
若かりし頃に、原発の周辺施設で過ごしたホーキング博士、
をはじめとする運動ニューロン障害の方々の病気の原因につながる。
また血液脳関門を通るのは、セシウムだけではない。
さまざまな化学物質が、農薬、食品添加物から、脳細胞にはいってくる。

近年の日本の脳・中枢神経のガンが、50年間で10倍に増えていること。
アルツハイマー・パーキンソン病による死因が激増していること。
「膜電位」は、その神経作用の機序の一つとして知っておくべきことである。

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