ヴィクトル・ユーゴー (バラ品種名)
Victor Hugo
Victor Hugo
「ヨーロッパ、その文化の炬火(たいまつ)は、まずギリシャによって担われ、ギリシャはそれをイタリーに伝え、イタリーはそれをフランスに伝えた。文化の量は想像力の量によって測られる。文化の普及者たる民衆は、愛好者であっても堪能者であってもいけない。ただ芸術家でなければならない。」
-、第四巻p260 豊島 与志雄訳
Les Miserables「レ・ミゼラブル」第4巻
~1832年6月6日の午前11時ごろ、人影のないリュクサンブールの園は
麗しい様を呈していた。
五目形に植えられた樹木や花壇の花は、日光のうちに香気や眩惑の気を送り合っていた。
真昼の光に酔うた枝々は、互いに相抱こうとしているかのようだった。
花壇のうちには、百合の花が、もろもろの花の王らしく咲き誇っていた。
それも至当である、香気のうちにて最も尊厳なるものは純白の発するかおりである。
チューリップの花は日の光を受けて、金色に紅色にまたは燃ゆるがようになり、(略)
豊かな光にはなんとなく人の心を安らかならしむるものがあった。
また雨が降ったために一握の塵埃(じんあい)もなかった。
あらゆる種類のビロードや繻子や漆や黄金は、花の形をして地からわき出で、
一点の汚れも帯びていなかった。壮麗であるとともに瀟洒(しょうしゃ)であった。
楽しき自然の沈黙が園に満ちていた、巣の中の鳩の鳴き声、群蜂の羽音、風のそよぎなど
無数の音楽が聞こえていた。
ライラックの花は終わりに近ずき、素馨(ジャスミン)の花は咲き初めていた。
鈴懸(すずかけ)は新しい樹皮をまとっていた。
マロニエのみごとな木立は微風に波打っていた。
近くの兵営の一老兵士は、鉄門から園の中をのぞいて言った、
「正装した春だ。」
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