Historia i intuicja ( History and intuition:歴史と直感)14.04.2011
http://czaswina.pl/artykul/historia-i-intuicja(ポーランドのワイン紹介雑誌の記事)
*ポーランド・クラクフでの講演(Follow your dreams: Marta Wille Baumkauff at TEDxKrakow)
葡萄栽培とワイン作りを行う、Marta Wille Baumkauffという一人のハンガリー人。彼女の土地はもともとハンガリー領内へ入植したフロリアン・ブリスキFlórián Bilickiというポーランド人男性のものであった。しかし彼は、大戦中ナチス・ドイツにワイン販路を阻まれ、戦後の共産党政権からも弾圧を受け1961年に亡くなる。戦争のの紆余曲折を経て、ドイツ人に嫁いだマルタとその子息がトカイの地で作る貴腐ワイン(ワイナリー名:Pendits)はドイツやポーランドのメディアでも取り上げられている。ルドルフ・シュタイナーのBiodynamic農法によって、彼女は、「ワインの為ではなく、土壌の為に働いている」と記事を読むととても興味深い。RoyalTokaji, Disznoko,Oremus, など日本で消費できるブランドはどれも外国の大きな資本のトカイ・ワイン。フランスの保険会社AXAアクサ、イギリス・ロスチャイルドなども冷戦終了後1989年を境に参入しています。 ただ、リンゴの木村秋則先生のように、スタートは小さな資本でも、自然栽培という哲学がしっかりしている限り、またその土地の天然酵母によって作られるワインは、本当の支持者が形成されていくのでしょう。
考え方、ビジョンが人を惹きつける、講演での言葉を聴いていると、
彼女のワインにも単にソムリエが選別する「味」「風味」、それ以上のエネルギーが備わっているような気がします。土壌・自然・人為的環境などを含めてterroirテロワールという言葉があります。
ワインは、色、酸味、甘味、厚み、果実味、そして香りと、その「審判」は多岐にわたり
「複雑かつエレガント、奥行きが、余韻が○○、バランスが○○」といったテイスティング・コメントは常に
「ほかとの比較」ではなく、さらに「飲む人の主観」も含まれ、少なからず幅があるはずです。
エゴも入るでしょう。時に困惑します。
さらに人は単なる五感だけで判断するような、物質的なものだけで生きてはいないので
その背景をもっと知った上で頂きたいものです。
木村先生の林檎は頂いたことがありますが、「新鮮さ」「自然な甘み」それ以外に言葉は浮かびません、そして先生にお会いして、本を読んで背景を知ってゆくと、なるだけ自然栽培で作られたものを頂きたいなと基準のようなものが生まれました。
離れて眺めていると人間社会、個人の欲がワインの味もイメージも支配している様にもみえます。
おそらく栽培されている葡萄の品種に対してもそうでしょう。商魂。そして権威は常に、素人、まだそれを経験していないひとびとに対して、無言で圧力をかけてきます。作り手にもさまざまあるようです。
農薬使用はあたりまえ、化学的な処方(加糖、人工酵母、香料)とさらにコマーシャリズムで
いくらでも人々を欺くことは可能です。医療で使われる「プラセボ」という言葉とも無縁ではないはずです。できればそういう力関係からは遠く離れていたいもの、、
自分でひとつひとつ調べて感じていきたいものです。
土地とブドウと酵母など、土地のあらゆる素材が、一握りの謙虚な人々の霊感を支配し、
ワインという不死性を体現してくれる人々を選び、そして味わう人をも選ぶかもしれないこと。
美しい曲は作曲家が死んでも、それは蘇りますし、ああこんな良い曲だったんだ、楽譜を見て弾きたいと急に思うのも、長い間、見聞きしたことでようやく選ばせて頂いたわけで、いきなり「分かる」というものでもない。
ただ、決してブランドや権威の言葉に委ねることなく、対価を支払う消費者が自ら調べ、知っていくこと、おそらくその土台だけが、「資本によって決められた価値は、必ずしも私にとっての価値ではない」ということに気付かせてくれるでしょう。言葉の一つ一つを読んでいると、自然の風物と一体化しているのが想像できます。